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AIにドラゴンズドグマ2をやらせようとして、人間のすごさに気づいた話

今のAIにドレイクを倒させたら? 画面を見て、考えて、操作するために必要な仕組みを考えていくうちに、ゲームをしている人間の処理のすごさに気づいた話。

Stark

最近、私は『ドラゴンズドグマ2』を再プレイしている。

理由は単純で、2026年10月9日に発売予定の『ドラゴンズドグマ2:ダークアリズン』に向けて、もう一度しっかり遊んでおきたかったからだ。カプコンによれば、本作は『ドラゴンズドグマ2』に新たなストーリーや体験を追加した拡張タイトルになる。

以前クリアしたときとは違うジョブを試したり、取り逃していた要素を回収したりしながら、寄り道多めで遊んでいる。

そんなある日、いつものようにドレイクと戦っている最中、ふと思った。

「今のAIに、このドレイクを倒させたらどうなるんだろう?」

『ドラゴンズドグマ2』で、空中のドレイクとポーンたちが戦っている場面

ChatGPTやClaudeのようなAIは、コードを書ける。画像も認識できる。状況を説明すれば、次に何をするべきかもまともに判断できる。

最近登場したGPT-6 Astraは、OpenAIがコンピューター操作やブラウジングを大きな強みとして挙げているモデルでもある。

私自身、過去にAIへ『ドラゴンクエストVII』をプレイさせたことがあるが、結果は散々だった(笑)。

だけど、今のAstraなら、もう普通にプレイできるんじゃないか。

最初はそんな軽い発想だった。

今回の前提

補足だが、今回考えているのはGUI、つまり実際のゲーム画面上での操作を前提としている。

AIにゲーム画面を認識させ、人間と同じように画面を見ながらプレイさせる方法だ。

ゲーム内部のメモリ(RAM)を読み取り、敵の座標や内部状態を直接取得して動かすような、いわゆるチート的な方法は使わない。

あくまで、

「画面を見て、考えて、操作する」

という、人間とほぼ同じ条件でどこまでできるのかという話だ。

ところが、実際に「AIにゲームをプレイさせるには何が必要か」を考え始めると、話はまったく違ってきた。

そして最終的に私は、

AIより人間のほうが意味不明なくらいすごいんじゃないか?

というところに辿り着いた。

まず、敵を見るだけで難しい

『ドラゴンズドグマ2』には、一般的なアクションゲームのような強力なロックオン機能がない。

プレイヤーは右スティックでカメラを動かしながら、自分で敵を画面内に捉え続ける必要がある。人間なら普通にやっている操作だ。

でも、これをAIにやらせようとすると、いきなり難易度が跳ね上がる。

まず画面を見て「これはドレイクだ」と認識する。次に、ドレイクが画面のどこにいるのかを把握する。敵が右に動けばカメラを右へ。左へ飛べば左へ。画面外に出そうなら追いかける。

しかもカメラだけ見ていればいいわけではない。

自分の位置。敵との距離。周囲の地形。HP。スタミナ。ポーンの状態。

さらに敵が攻撃モーションに入ったら「これは攻撃が来る」と判断し、「今は攻撃をやめる」「回避する」「距離を取る」といった行動に切り替えなければならない。

そして回避が終わったら、また敵を探して攻撃に戻る。

私たちはこれをほとんど無意識でやっている。

考えてみれば、かなりおかしい。

人間はゲーム中、いったい何個の処理をしているのか

例えばドレイクが腕を振り上げたとする。

人間はそれを見た瞬間に「攻撃が来る」と認識する。でも実際には、その一瞬の中で多くのことをやっている。

敵の姿勢を見る。過去の経験から攻撃モーションだと判断する。攻撃範囲を予測する。自分との距離を確認する。

今出している攻撃を継続するか中断するか判断し、回避方向を決める。回避後に敵がどこへ移動するかも、なんとなく予測する。

それをやりながらカメラも操作している。さらに画面の隅ではHPやスタミナも見ているし、場合によってはポーンが倒れていないかも確認している。

でもゲームを遊んでいる本人には、

「敵が殴ってきたから避けた」

くらいの感覚しかない。

人間は大量の処理をしているのに、自分ではその処理の大半を意識していない。ここが一番面白かった。

じゃあAIなら、どう作る?

もちろん、AIにゲームをさせること自体は不可能ではないと思う。

ただしChatGPTのようなAIに、

「スクリーンショットを見て、次の操作を決めて」

と毎回聞いていたのでは遅すぎる。

ドレイクは待ってくれない。

ここで現在のAIにとって大きな壁になるのが、遅延だ。

Artificial Analysisの2026年9月時点の計測では、GPT-6 Astraのmedium設定は、OpenAI APIへのリクエストから最初のトークンが返るまで3.82秒となっている。

もちろん、これはテキストAPIを測定したベンチマークで、ゲーム映像から敵を認識して操作する場合の速度を直接測った数字ではない。

それでも、数秒単位で「見て、考えて、答える」を繰り返す方式では、リアルタイムのアクションゲームが厳しいことは想像できる。

ただし、ここには一つ大きな注意点がある。

私たちがChatGPTやAPI経由で使うAstraは、クラウド上のモデルにデータを送り、そこから応答を受け取り、必要ならツールやOSを経由して実際の操作につなげる。

つまり、私たちが体感する遅延のすべてが「Astraそのものが考えている時間」とは限らない。

実際、OpenAIが公開しているPlaycoの事例では、AstraをUnityやGodotなどのゲームエンジンに直接接続し、シーン編集だけでなくゲームをプレイしてテストし、変更を検証するところまで行わせている。

ただしこれはゲーム開発・テスト用途の事例だ。低遅延の映像入力と操作系を接続して、『ドラゴンズドグマ2』のような高速なアクションゲームをリアルタイムに戦わせた場合にどこまで動けるのかは、これだけでは分からない。

もしかすると、今私たちが見ているAIの限界の一部は、知能そのものではなく、AIに与えられた「身体」の限界なのかもしれない。

とはいえ、私たちが実際に作れる環境でドグマをプレイさせるなら、この遅延は無視できない。

そこで、全部をAIに考えさせるのではなく、処理を分ける。

例えば敵の位置を追跡する処理は、PC上で動く画像認識に任せる。敵が画面中央からずれたら、自動的にカメラを補正する。

これはLLMに毎回考えさせる必要はない。

回避や攻撃も同じだ。「右へ回避する」「敵に近づく」「弱攻撃を3回出す」といった基本動作を、あらかじめ関数として作っておく。

そうするとAI本体が考えるのは、

「今、何をするべきか」

だけでよくなる。

私はこれを考えているうちに、「反射」「行動」「思考」の3層に分ければいいんじゃないかと思った。

敵をカメラ中央に捉え続けたり、危険に即座に反応したりする処理は「反射」。

回避や攻撃といった定型動作は「行動」。

そして「今は攻撃するべきか」「回復するべきか」「距離を取るべきか」を決めるのが「思考」だ。

妙に生き物っぽい構造になる。

失敗から覚えさせたら、もっと面白い

さらに面白いのが、プレイログを残すことだ。

例えばAIがドレイクの炎を食らったとする。そのとき「なぜ被弾したのか」をあとから分析する。

回避が遅かったのか。距離が近すぎたのか。攻撃を欲張りすぎたのか。カメラが敵を見失っていたのか。

原因が分かれば、

「このモーションが見えたら攻撃を中断して後方へ回避する」

というルールを追加できる。

そして同じ状況に遭遇したとき、そのルールを使う。

それを何度も繰り返せば、最初は何もできなかったAIが少しずつ戦い方を覚えていく。

ゲームの攻略情報を最初から全部教えるのではなく、実際に死にながら覚えていくAI。

これは普通に見てみたい。

最初はドレイクにボコボコにされていたAIが、何十戦、何百戦と経験したあとに無傷で倒したら、たぶん私は感動する。

もちろん、これを本格的な機械学習としてやるのか、成功・失敗ログからルールを蓄積するのかで仕組みは大きく変わる。

ただ、ここで重要なのは手法そのものではない。

「経験を次の行動に変える」

という部分だ。

それは人間がゲームを覚える過程にもよく似ている。

でも、それって人間が普段やっていることだった

ここまで考えて、少し変なことに気づいた。

AIにゲームをさせるために、画像認識を作る。敵追跡を作る。カメラ制御を作る。攻撃や回避を関数化する。経験をログに残す。失敗原因を分析する。成功した行動を技能として保存する。

そうやって巨大なシステムを組もうとしている。

でも人間は、

それを全部、頭の中だけでやっている。

しかもゲームを買って数時間も遊べば、普通に戦えるようになる。

誰かに「敵の座標を検出してください」なんて教えられていない。カメラ制御のアルゴリズムも知らない。それでも画面を見ながら勝手に学習していく。

初めて見る敵でも、「この構え、なんかヤバそう」という感覚だけで攻撃を避けたりする。一度食らえば「これは離れたほうがいいな」と覚える。

さらに、人間は毎回ゼロから覚えているわけでもない。

別の敵との戦闘で身につけた経験を、新しい敵にも応用する。

しかも人間の脳が消費するエネルギーは、およそ20Wと見積もられている。脳は体重の約2%にすぎない一方、安静時の全身酸素消費量のおよそ20%を占めるという。

もちろんGPUと脳は構造も目的もまったく違うので、「脳はGPUの何倍すごい」と単純比較できるものではない。

それでも、視覚、予測、判断、運動制御、記憶、学習を同時に走らせながら、その程度のエネルギーで動いているのは驚異的だ。

AIにゲームをさせたかっただけなのに

最初は単純に、

「AIにドレイク倒させたら面白そう」

と思っただけだった。

でも仕組みを考えれば考えるほど、普段自分が何気なくやっているゲーム操作の裏側に、とんでもない量の認識、判断、予測、学習が隠れていることに気づいた。

AIは急速に進化している。文章を書き、画像を理解し、コードを書き、高度な推論やコンピューター操作までできるようになってきた。

それでも、情報が絶えず変化する環境の中で、画面を見て、瞬時に考え、操作し続けるのはまた別の難しさがある。

いつかAIが、人間と同じような速度で画面を認識し、状況を判断し、ほとんど遅延を感じさせずに操作できるようになる日が来るかもしれない。

初めて見る環境を理解し、経験から学び、リアルタイムで判断して行動する。

そこまで自然にできるAIが現れたら、私はAGIがかなり現実的なところまで来たと感じる気がする。

今の私は、ドレイクが腕を振り上げれば避ける。

敵が画面の外へ動けば、何も考えずカメラで追いかける。

スタミナを見ながら攻撃し、ポーンが倒れれば助けに行く。

そして本人は、

「ゲームしてるだけ」

くらいにしか思っていない。

AIにゲームをさせようとしていたはずなのに、最終的に一番興味を持ったのはAIではなく、

人間のほうだった。

参考資料