1937年7月2日、太平洋上空で一機の飛行機が消息を絶った。
乗っていたのは、世界一周飛行に挑戦していた女性飛行士アメリア・イアハートと、航法士フレッド・ヌーナン。
大規模な捜索にもかかわらず、二人も飛行機も見つからなかった。
それから89年。
2026年10月14日、南太平洋の小さな無人島で、ある物体の正体を確かめるための水中調査が始まった。
その物体は、衛星画像に写り込んでいたものだ。
果たして89年前に消えた飛行機は、今もこの島に眠っているのだろうか?
世界一周飛行の途中、突然消えた二人
アメリア・イアハートは、アメリカの航空史を代表する女性飛行士だった。
1932年には女性として初めて大西洋の単独無着陸飛行に成功するなど、数々の記録を残している。
ロッキード・エレクトラ10-Eの前に立つアメリア・イアハート。写真:Smithsonian Institution / NASA(GPN-2002-000211)/Wikimedia Commons(米国Public Domain表記)
そんな彼女が1937年に挑戦したのが、赤道付近を通る世界一周飛行だった。
使用した飛行機は、双発機「ロッキード・エレクトラ10-E」。
航法士のフレッド・ヌーナンとともに、各地を経由しながら飛行を続けていた。
そして1937年7月2日。
二人はニューギニア島のラエを出発し、太平洋上のハウランド島へ向かった。
ところが、目的地は非常に小さな島だった。
現代のようにGPSが使えるわけでもない。天体観測や計算による航法、無線通信を頼りに、広大な海の中から島を探さなければならなかった。
その飛行の途中で、問題が起きる。
最後の無線通信に残された手がかり
ハウランド島付近には、イアハートの飛行を支援するため、アメリカ沿岸警備隊の船「イタスカ」が待機していた。
しかし、飛行機と船の無線通信はうまくかみ合わなかった。
イタスカ側はイアハートの声を何度も受信していたものの、双方で十分なやり取りができていなかったのだ。
記録によると、イアハートはハウランド島が見つからないことや、燃料が少なくなっていることを伝えていた。
そして午前8時43分ごろ、最後に確認された無線通信が記録される。
そこで伝えられたのが、「157/337」という数字だった。
これは一般に、航法で使われる位置線の方向を示す数字と考えられている。
二人はその線に沿って島を探していた可能性がある。
しかし、その後の通信は途絶えた。
米海軍などによる大規模な捜索が行われたが、決定的な発見には至らなかった。
こうして、二人の行方は航空史に残る謎となった。
有力な二つの説。海に墜落したのか、それとも島に着陸したのか?
イアハートの失踪には、長年にわたりさまざまな説が唱えられてきた。
その中でも、今回の調査に関係するのが二つの仮説だ。
① 燃料切れで海に墜落した説
最も一般的な説明の一つが、ハウランド島を発見できず、燃料切れによって海上に不時着、あるいは墜落したというものだ。
無線通信の内容や燃料の状況から考えると、不自然な話ではない。
アメリカのスミソニアン国立航空宇宙博物館も、確認されている飛行記録から、この説明を合理的な見方として紹介している。
ただし、肝心の機体は発見されていない。
② 別の島に不時着していた説
もう一つが、ハウランド島を見つけられなかった二人が、別の島まで飛んだという説だ。
候補になっているのが、現在のキリバス共和国にある「ニクマロロ島」。
かつてはガードナー島と呼ばれていた無人の環礁だ。
この説では、二人は島に不時着したあと、しばらく生存していた可能性が考えられている。
なぜこの島なのか。
理由の一つは、最後の無線に出てきた「157/337」という位置線だ。
この線を南東方向へ延ばすと、ニクマロロ島付近につながる。
もちろん、同じ線の方向に島があるというだけで、実際にそこへ飛んだ証拠にはならない。
それでも、研究者たちが長年この島を調査してきた理由の一つになっている。
衛星画像に写っていた謎の物体「タライア・オブジェクト」
今回の調査で最大の注目を集めているのが、ニクマロロ島の浅いラグーンにある「タライア・オブジェクト(Taraia Object)」だ。
※ニクマロロ島の調査をイメージしたAI生成画像。赤丸部分は調査対象をわかりやすく示したものです。実際の衛星画像・調査対象の写真ではありません。
タライア・オブジェクトが写った実際の衛星画像は、パデュー大学の公式発表で見ることができる。
2020年の衛星画像に、人工物のようにも見える形が写っていた。
さらに調査チームによると、1938年に撮影された航空写真にも、同じ場所に物体らしきものが確認できるという。
ここが興味深い。
もし1938年の写真に同じ物体が存在していたとすれば、少なくとも比較的新しい時代に捨てられた物ではない可能性が出てくる。
しかも1938年は、イアハートが消息を絶った翌年だ。
そして実際、別の見解もある。
長年イアハートの失踪を調査してきた研究者リック・ギレスピーは、この物体について、飛行機ではなく倒れた木ではないかと指摘している。
つまり、この段階では機体どころか、人工物なのか自然物なのかさえ決着していないのだ。
実は過去にも「飛行機発見!」が空振りしていた
ここでもう一つ、興味深い出来事を紹介したい。
2024年、深海探査会社Deep Sea Visionが、太平洋の海底で飛行機に似た形をソナーで発見したと話題になった。
深さ約5,000メートル付近に写ったその物体は、イアハートの機体ではないかと期待された。
しかし、後の詳細調査で分かったのは、飛行機に似た形をした岩の集まりだった。
つまり、今回の発見より前にも、似たような期待と落胆があったわけだ。
ミステリーとして面白いのは確かだが、期待だけで結論を出すわけにはいかない。
2026年10月14日、ついに水中調査が始まった
今回の「タライア・オブジェクト探査」は、パデュー大学、パデュー研究財団、Archaeological Legacy Instituteなどが共同で進めている。
17人の調査隊はキリバスから船で移動し、10月12日にニクマロロ島へ到着。
翌13日に島で調査の準備を始め、14日にはラグーン内で水中探査を開始した。
今回の調査には、磁力計やサイドスキャンソナーなどが使われる。
磁力計は磁気の変化を測り、ソナーは音波を使って水中の形状を調べる装置だ。
こうした方法で物体の位置や特徴を調べ、必要に応じてさらに直接的な確認を進める計画になっている。
ちなみに、パデュー大学には特別な縁がある。
イアハートはかつて同大学で女性学生の進路相談などに携わり、最後の世界一周飛行で使ったエレクトラの資金も、大学関係の航空研究基金が支援していた。
89年後にその大学が探索に加わっているというのも、歴史を感じさせる話だ。
ただし、2026年10月15日時点では、機体の発見は確認されていない。
今回の調査は、まだ答えを探している最中なのだ。
89年前の謎は解けるのか?
今回の調査でタライア・オブジェクトの正体が分かれば、長年の論争が大きく進む可能性がある。
もしロッキード・エレクトラ10-Eと識別できる機体の一部が見つかれば、ニクマロロ島への不時着説を裏付ける重大な証拠になるだろう。
反対に、ただの倒木や別の自然物だったと分かれば、この手がかりについては再検討が必要になる。
そして、何も見つからなかったとしても、それだけでほかの失踪説まで否定できるわけではない。
89年前の出来事を解明するには、さまざまな証拠を積み重ねていく必要がある。
私が今回特に面白いと思ったのは、衛星画像という現代の技術が、90年近く前の事件の調査につながっていることだ。
当時は見つけられなかったものも、技術が進めば調べ直せる。
そして今回は、過去の航空写真と最新の衛星画像を照らし合わせながら、現地の水中探査によって答えを探そうとしている。
果たして、長年の謎に決着がつくのだろうか。
調査結果に注目したい。
ゆなのひとこと
スタークくん、89年も前の謎が、現代の技術で解き明かされようとしているなんて、なんだかワクワクするね!🔍✨
でも、飛行機だと思ったら岩だったり、今回も倒木かもしれなかったり……。ミステリーって、そう簡単には答えが出ないものなんだね。
今回の調査で、アメリア・イアハートとフレッド・ヌーナンの最後の旅路が少しでも明らかになるといいな。
89年越しの謎、その結末を一緒に見届けようね! 💙
参考・出典
※2026年10月15日時点の情報に基づく。タライア・オブジェクトの正体は未確認であり、本文の不時着説は仮説として紹介している。
※サムネイルと島の挿絵はAI生成イメージです。サムネイル左下の古写真風の人物も創作で、史料写真ではありません。