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「AIは敵に回った?」圧倒的な物量攻撃に、最強の防御AIは勝てるのか

AIが攻撃の速度と規模を押し上げる時代、防御側もAIで迎え撃てるのか。OpenAIのDaybreakやAnthropicのProject Glasswing・OSS Scannerの公式情報をもとに、多層防御とアクセス格差まで、スタークとゆなが考えます。

Stark
AI生成のイメージイラスト。ソファでテレビを見て驚くゆなと黒いクマのスターク。テレビには『AIは敵に回りました。』のテロップ。『AIは敵に回った? 最強の盾はあるのか』の文字入り(実在の番組や人物ではありません)

「AIは敵に回りました」

そんな強い言葉を耳にすると、少しドキッとします。

もちろん、かなり刺激の強い表現です。でも、まったく的外れとも言い切れません。

文章生成、画像生成、コード生成。私たちはすでに、AIを日常的な便利ツールとして使い始めています。その一方で、同じ能力はサイバー攻撃にも使われます。

では、ここで一つ気になる疑問があります。

AIが圧倒的な物量で攻めてきたとき、さらに高性能なAIで守り切れるのでしょうか。

今回はこの問いを軸に、AI時代のサイバーセキュリティを考えてみます。

生成AIで何が変わったのか

サイバー攻撃の自動化自体は、生成AI以前からありました。大量のアクセスを送りつける。既知の弱点を機械的に探す。そうした攻撃は、昔から存在しています。

ただ、生成AIで変わるのはそこから先です。

大きいのは、状況を読んで、次の手を変える能力です。

たとえば、システム構成を読み取り、弱点候補を洗い出し、試した結果を見て別の方法を選ぶ。こうした試行錯誤を、AIが支援したり自動化したりできるようになってきました。

Anthropicは2026年9月、Z.ai(Zhipu AI)のオープンウェイトモデル「GLM-5.3」について、サイバー攻撃に使えるエクスプロイト(脆弱性を突くプログラム)をエンドツーエンドで自律的に組み立てる強い能力があると評価しました。これはAnthropicによる評価であり、すべての実環境への攻撃が成功するという意味ではありません。

つまり今後は、限られた一部の専門家だけでなく、より広い範囲で高度なサイバー能力が利用される可能性があります。

それでも、試行回数と試行錯誤の速度が上がることは、防御側にとって大きな脅威です。

防御側も、AIで迎え撃つ時代へ

ここで気になるのが、「なら防御側も最強のAIで守ればいいのでは?」という発想です。

実際、この方向はすでに始まっています。

OpenAIはDaybreakを通じて、認可されたセキュリティ業務向けのアクセス制度を用意しています。Daybreak Blueは脆弱性の切り分けやコードレビューなどの防御業務向け、Daybreak Redは侵入テストなどより高度な認可済み作業向けで、どちらも利用には審査と承認が必要です。GPT-5.5-Cyberのようなサイバー専用モデルはRed側でしか使えず、GPT-5.6-Cyberにはさらにモデルごとの追加承認が求められます。

Anthropicも2026年4月にProject Glasswingを開始し、一般公開していない高性能モデル「Claude Mythos Preview」を限られた組織に提供して、重要ソフトウェアの脆弱性発見を支援してきました。さらに10月には、Glasswingで得た知見をもとに、対象となるオープンソースプロジェクトが申請して利用できる無償の脆弱性スキャン「OSS Scanner」も発表しています。

この流れを見ると、AIによる攻撃を、AIを含む防御で迎え撃つという構図は、すでに現実のものになっています。

青いサイバー防壁でデジタルサービスを守るゆなとスターク

イメージ画像(AI生成)。実際の攻撃や防御システムの画面ではありません。

100万回の攻撃に、100万回AIで返すわけではない

とはいえ、ここで誤解しやすい点があります。

AI攻撃が100万回飛んでくるなら、防御側も100万回ぶん最強モデルを回さないと勝てないのか。

答えは、そう単純ではありません。

実際の防御は、既知の攻撃や大量の不審通信を、まずファイアウォールやWAF、レート制限などの高速な仕組みでさばきます。そのうえで、未知の攻撃や複雑な挙動だけをAIが解析するのが現実的です。

要するに、防御の現実解は「全部をAIに任せる」ことではありません。

既存の高速な防御技術と、高度なAIを組み合わせる多層防御です。

この視点はかなり重要です。防御AIは魔法の盾ではなく、防御システム全体を賢くするための一部だと考えたほうが実態に近いでしょう。

※「100万回」は説明のためのたとえで、実際に観測された攻撃数ではありません。

本当に難しいのは、見つけた後

もう一つ大切なのは、脆弱性を発見することと、実際に安全に修正することは別問題だという点です。

たとえAIが弱点を見つけても、その修正が安全なのかを検証し、既存システムへの影響を確かめ、本番環境へ反映しなければ意味がありません。

ここで誤ると、攻撃を止める前に自分たちでサービスを壊してしまうこともあります。

つまり、今後の勝負を決めるのは、モデルの賢さだけではありません。

発見 → 検証 → 修正 → 展開

この流れをどれだけ速く、どれだけ安全に回せるか。そこが本質です。

最強の盾を使えるのは誰なのか

さらに厄介なのが、防御AIへのアクセス格差です。

高度なサイバー能力を持つモデルは、誰でも自由に使えるわけではありません。これは当然です。強い防御能力は、そのまま攻撃にも転用できるからです。

ただ、その結果として、大企業や大規模組織だけが強力な防御AIにアクセスでき、個人開発者や小規模チームは置いていかれる可能性があります。

現実的なのは、クラウドやセキュリティ事業者が、高度なAI防御を組み込んだサービスとして提供し、個人はそれを利用する形です。実際にOpenAIも2026年6月、セキュリティ企業が自社の製品やサービスにOpenAIのモデルを組み込んで顧客に届ける「Daybreak Cyber Partner Program」を始めています(モデルへの直接アクセスは参加パートナーに限られます)。

つまり、個人に必要なのは“最強モデルの所有”ではなく、最強モデルに守られた基盤を使えることです。

ただし、みんなが同じ防御基盤に依存するほど、そこに共通の弱点があった場合の影響は大きくなります。便利さの裏側に、新しい集中リスクも生まれるわけです。

AIは敵に回ったのか

ここまで見てくると、「AIは敵に回った」という言葉は、半分は当たりで、半分は違うと感じます。

AIそのものが敵になったというより、攻撃側も防御側も、AIを使う時代になったと考えるほうが正確でしょう。

AIは攻撃の速度と規模を拡大します。一方でAIは、防御側にとっても重要な盾になります。

だから問題は、「AIが危険か安全か」という単純な話ではありません。

誰がその力を持ち、何のために使い、その防御能力に誰がアクセスできるのか。

そこがこれからの大きな分かれ道になりそうです。

AIの進化によって、サイバー攻撃は確かに厄介になります。でもその一方で、社会を守るための防御手段も、同じくAIによって強化されていきます。

私たちが考えるべきなのは、AIのない時代へ戻ることではありません。

AIがある時代に、どうやって安全な社会を維持するのか。

これこそが、今いちばん問われていることなのかもしれません。

※確認基準日:2026年10月21日。各サービスの提供条件やモデル名は変更される場合があるため、最新情報は公式発表をご確認ください。サムネイルはニュース番組風のイメージイラスト(AI生成)で、実在の番組や人物を再現したものではありません。

参考資料