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AIが605回死亡してマイクラをクリア!? 2,783本のプログラムを書いた驚きの攻略法

4体のAIが605回死亡し、2,783本のプログラムを書いてMinecraftを攻略。Mineflayerによる操作と画面認識の違い、人間の介入、AIの「手足」を増やす未来を考える。

Stark
イメージイラスト(実験の実際の画面ではありません)。ゲームを操作するゆなに、スタークが『先にクリスタル壊さないと!?』と助言し、ゆなが『わかってるっ!』と返す。『AIが605回死亡してマイクラをクリア!? 2,783本のプログラムを書いた驚きの攻略法』の文字入り

AIはゲームを「遊んだ」のか、それとも「プログラムで攻略した」のか?

605回死んでも諦めないAIたち

2026年10月15日(UTC、日本時間では16日)、Maxence Faldor氏らの研究チームが、4体のAIエージェントによる『Minecraft(マインクラフト)』攻略を報告する論文をarXivで公開した(査読前のプレプリント)。使ったモデルは Gemini 4 Argon。ランダム生成されたサバイバルワールドで、エンダードラゴンの討伐に成功したという。arXiv:2610.22319

項目 論文で報告された結果
攻略時間 27時間14分
プレイヤーを操作するAI 4体(観察専用の別エージェントも存在)
作成・実行したプログラム 2,783本
チーム合計の死亡回数 605回
難易度 Easy
攻略中の人間の戦略介入 なし

605回はドラゴン戦だけではなく、探索や資源集めも含めたチーム全体の死亡回数。今回報告されたのは1回の実験結果で、同じ条件で何度やっても成功するという証明ではない。また「人間の介入なし」は攻略の作戦や役割分担に口を出さなかったという意味で、研究者は実験を監視し、必要なら停止できる状態だった。

注目したいのは、AIが決まったマクロを繰り返したのではなく、自分たちで操作プログラムを書き、動かして、失敗したら修正し続けたことだ。

そもそもマイクラのクリアって何するの?

マイクラには決められた一本道の攻略ルートがない。木や鉱石を集めて装備を作り、食料を確保し、別世界のネザーへ移動。エンダーアイを用意して地下要塞を探し、エンドへ到達してようやくドラゴンと対峙する。

今回の研究が試していたのは、こうした長い工程を、複数のAIが自分たちで組み立ててやり遂げられるかという能力だ。

ただし、AIがマイクラの攻略方法をゼロから発見したわけではない。論文は、モデルが事前学習によってMinecraftやMineflayerに関する豊富な知識を持っていると明記している。ゲーム固有の攻略手順を人間が実験時に書き与えたわけではない、というのが正確なところだ。

AIはコントローラーで遊んでいたわけじゃない

画面認識とコントローラーで遊ぶ方式と、Mineflayerで状態を取得してプログラムで操作する方式の比較図。今回の研究は後者

MineflayerはMinecraftのボット用オープンソースライブラリだ。RAMを直接読むのではなく、ゲームとの通信を通じて、位置、体力、所持品、周囲のブロックや敵などをプログラムから扱い、移動・採掘・攻撃などの操作を実行できる。Mineflayer公式APIドキュメント

AIは短いJavaScriptプログラムを書いて実行し、返ってきた状態やエラーを読み、次のプログラムを書く。人間が用意したのは標準のMineflayerと経路探索のプラグインといった汎用の道具で、ゲーム専用の攻略プログラムは用意されていない。論文によれば、周辺の情報には岩の向こうのブロックやドラゴン内部の行動状態など、通常の人間には画面から分からないものも含まれる。

つまり「画面を見て、コントローラーで戦ったAI」とは評価条件が違う。今回の中心は、長期計画、プログラミング、デバッグ、チーム間の連携だ。それでも2,783本のプログラムを動かしてゴールまで到達した事実は興味深い。

ちなみに論文では、実行したプログラムの22%がエラーで終了したとも報告されている。AIがコードを書けることと、安定して動かせることはまだ別問題なのだ。

4体のAIが自分たちで役割分担!?

4体のAIボットが木材集め、採掘、クラフト、探索に分かれて協力するイメージイラスト

イメージイラスト(創作)。論文に掲載された実験の画面ではありません。

4体はゲーム内チャットと共有メモリを使い、資源集め、道具作り、ネザー探索などを分担した。仲間が死亡した位置を共有し、アイテムが消える前に回収する協力も見られた。

特に面白いのは、地下要塞の場所を探す場面だ。エンダーアイが飛ぶ方向を離れた2地点から調べ、三角測量で位置を推定したという。さらに、実験開始から約13時間17分でエンドに到達したものの、ドラゴン討伐までそこから約14時間もかかった。

原因の一つは、ドラゴンの体力を回復させる10個のエンドクリスタル。AIたちは攻略を重ねた末、土ブロックを積んで柱を登り、クリスタルを壊す手順を作った。

人間が一言アドバイスしたら、もっと早かったんじゃない?

研究では人間が攻略中に指示を出さなかったからこそ、AIが自分で行動する能力を測れた。一方、実用的なAI運用では、完全自律が最も効率的とは限らない。

例えば同じ環境で、①完全自律、②ヒント1回、③ヒント最大5回、④人間が作戦担当、という条件を比べたらどうなるだろう。攻略時間や死亡回数だけでなく、API費用も比較したい。もちろんこれはYuna Orbitの実験アイデアで、今回の論文が検証した結果ではない。

なお研究者の記録によると、攻略までのモデル利用料を公開API価格で試算した金額は、導入価格で約520ドル、通常価格換算で約1,040ドル。これは運用コストの確定値ではなく、記録されたトークン量と価格表に基づく推計だ。

AIの頭脳を増やすより、手足を増やす?

ここからはYuna Orbit独自の考察だ。

AIにすべての操作をその都度考えさせると、応答待ちやAPI費用が積み上がる。そこで移動、戦闘、採掘、回復などを専用プログラムとして用意し、座標やセンサー情報を使って必要な動作を切り替える。

LLMは目標の決定、作戦の変更、想定外のトラブルの対処を担当する。ゲーム内データの取得手段があるなら、チャットAIを司令塔にして、既存プログラムを手足として呼び出す構成も考えられる。

もちろん、必要な情報を取得できるかはゲームごとに違い、未知の障害物や不測の戦闘に対処する難しさも残る。それでも「通常の操作は高速なプログラム、考えるべきときだけLLM」という分担には、実用上の魅力がある。

AIにゲームを操作させる難しさは、以前の記事「AIにドラゴンズドグマ2をやらせようとして、人間のすごさに気づいた話」でも考えた。

AIはゲームを「遊んだ」のか?

今回の研究は、AIが人間と同じように画面を見てゲームを体験したことの証明ではない。それでも、複数のAIが長い目標を共有し、自分で道具を作り、失敗を修正し、攻略にたどり着いたことには意味がある。

AIがゲームをクリアする時代から、AIと一緒にゲームを楽しむ時代へ。 次はどんな冒険が待っているのだろう。

※確認基準日:2026年10月23日。数字は論文(arXiv:2610.22319 v1)に基づきます。論文は著者らによる報告で、査読や独立した再現は確認できていません。API費用は論文の推計です。人間の助言による効率化の比較案や「手足」を増やす設計はYuna Orbitの考察で、研究の結果ではありません。サムネイルと挿絵は概念を説明するための創作イメージで、実験の実際の画面ではありません。MinecraftはMojang/Microsoftの商標です。本記事は独立した研究紹介・考察であり、権利者の公式企画ではありません。

参考資料