不登校支援にメタバース? 社会から遠ざかるのか、新しい居場所になるのか

クラスターが広域自治体の不登校支援事業向けに3Dバーチャル空間を構築。「応援」ボタンや「部室」は新しい居場所になるのか、それとも社会から遠ざかるのか。本人の意思と選択肢の広げ方を、スタークとゆなが考えます。

Stark
AI生成のイメージイラスト(cluster公式の画面ではありません)。「部室」「教育庁フロア」「みんなの広場」「学びのエリア」の看板がある明るい仮想空間を背景に、VRゴーグルを着けた黒クマのスタークと銀髪のゆながはしゃいでいる。『不登校支援×メタバース』の文字入り

2026年10月14日、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター株式会社が、不登校の児童・生徒を支援するための3Dバーチャル空間を構築したと発表しました。[※1]

クラスターは、合同会社デロイト トーマツが受託した広域自治体の不登校支援事業に対し、2026年8月から技術やノウハウを提供しています。

今回の空間は自治体の不登校支援事業向けに構築されたもので、一般ユーザーが自由に参加できるサービスとして案内されているわけではありません。2026年10月16日時点で確認した発表では、具体的な児童生徒の利用開始日や参加人数は明記されていません。「運用が始まっていない」と断定できるわけでもない点には注意が必要です。

では、そもそも不登校の子どもたちは増えているのでしょうか?

文部科学省の調査によると、全国の小中学校における不登校児童生徒数は、2019年度の181,272人から2024年度には353,970人へと増加。5年間でおよそ2倍になっています。ただし、2024年度の前年度比増加率は2.2%と、前年の15.9%から鈍化しています。[※2]

小中学校の不登校児童生徒数の比較図。2019年度は181,272人、2024年度は353,970人

国公私立の小・中学校の合計(年度別)。出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(PDF)をもとにYuna Orbitが作成。

そんな中で、新しい選択肢の一つとして注目したいのが、今回のメタバースを活用した取り組みです。

声を出さなくても交流できる、新しい居場所

今回のバーチャル空間には、子どもたちが安心して過ごせるように、さまざまな工夫が施されています。

例えば「応援」ボタン。会話やチャットに抵抗がある子でも、ボタン一つでオンライン学習を頑張っている友達を励ますことができます。

さらに、ほかの自治体の子どもたちとも交流できる「教育庁フロア」や、共通の趣味や関心を持つ仲間が集まれる「部室」も設けられています。支援する側にも、子どもたちが空間のどこで活動しているかを把握し、必要に応じて見守りや声かけができる仕組みが用意されています。[※1]

実際のバーチャル空間の画像は、クラスター株式会社の公式発表(2026年10月14日)で見られます。この記事のアイキャッチは、AIで生成したイメージで、cluster公式の画面ではありません。

学校という環境になじめなくても、別の場所では自然に人と関われるかもしれません。特に、対面での交流に強い不安を感じている子どもにとって、アバターを介した交流は最初の一歩になり得ます。

快適すぎる仮想空間は逆効果にならない?

オンラインで友達を作り、交流することも人間関係の一つです。しかし、仮想空間での交流だけで十分なのかという点には、議論の余地があるでしょう。

学校では、勉強だけでなく、集団生活や対面でのコミュニケーション、意見が合わない相手との付き合い方など、さまざまな経験を積むことができます。そうした機会が少なくなることを心配する意見もあるはずです。

もちろん、メタバースを利用することで、必ず現実社会との距離が広がるというわけではありません。むしろ、それまで誰とも交流できなかった子が、仮想空間を通して人とつながれるようになる可能性もあります。

結局、一番大切なのは本人の意思では?

不登校になる背景は一人ひとり異なります。本人の意思を尊重することは大切ですが、意思があっても行動に移せなかったり、自分でもどうしたいのかわからなかったりする場合もあるでしょう。

そうした子どもたちにとって、最初から学校への復帰を求められる場所よりも、まずは安心して参加できる場所のほうが、一歩を踏み出しやすいかもしれません。周囲が一方的に進む方向を決めるのではなく、本人が動きたいと思ったときに選べる道を用意しておく。それも支援の一つの形ではないでしょうか。

そもそも、何が正解なのだろう?

実は文部科学省も、不登校支援について、学校への登校という結果だけを目標にするのではなく、子どもたちが主体的に進路を考え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。一方で、学業の遅れや進路選択への影響にも注意が必要だとしており、学校教育の意義や役割も重視しています。[※3]

学校に戻ることで良い結果につながる子もいれば、別の学び方を選ぶことで自分の道を見つける子もいるでしょう。今は正しいと思っている選択が、10年後にも正しかったと思えるとは限りません。

だからこそ、一つの生き方を正解として決めつけるのではなく、それぞれの子どもが自分に合った道を選べる環境が重要なのではないでしょうか。

メタバースが増やすのは、未来の選択肢

メタバースの居場所から「学校に戻る」「別の学び方を選ぶ」「新しい人間関係」の3つの選択肢へ道が分かれる概念図

Yuna Orbit制作の概念図。3つの道は選択肢の一例で、今回の取り組みの支援効果や調査結果を示すものではありません。

今回の取り組みが実際にどれほどの成果を生むのかは、これからの運用や検証によって明らかになっていくでしょう。メタバースは、不登校を解決する万能な手段ではありません。

しかし、これまで学校にも、ほかの居場所にもなじめなかった子どもが、新しいつながりを見つけられるかもしれません。

大切なのは、不登校を無条件に肯定することでも、無理に学校へ戻すことでもなく、子どもたちが自分の未来を選べる可能性を広げること。

その意味で、今回のメタバースを活用した支援は、十分に挑戦する価値のある取り組みだと思います。

みなさんは、メタバースによる不登校支援をどう考えますか?


参考資料

※2026年10月16日時点で確認できた情報に基づく。不登校児童生徒数は国公私立の小・中学校の合計で、高等学校は含まない。アイキャッチはAIで生成したイメージで、cluster公式のサービス画面ではありません。