2026年10月15日(米国時間)、Teslaはテキサス州ウェーコ近郊で、次世代スポーツカー「Roadster(ロードスター)」を披露しました。2017年に次世代モデルの構想が登場してから、約9年。今回の発表で注目されたのは、速さだけではありません。路面に張り付いて逆さまになり、空中で姿勢を変え、さらに車を飛び越えるという、まるで映画のようなデモです。[※1][※2]
新型ロードスター、衝撃のデモを披露!
まずは公式イベント映像を見てみましょう。
Tesla公式「Roadster Event」をYouTubeで見る
デモでは、車体下部の吸引機構で曲面のランプに張り付き、逆さまの状態まで走行。ランプから離れると空中で向きを変え、車輪を下にして着地しました。さらに、並べられたTesla車を飛び越えるジャンプも披露しています。[※1][※2]
そしてもう一つの見どころが、0〜60mph(約97km/h)を0.81秒という加速デモ。これはTeslaがイベントで示した計測値で、第三者が同条件で検証した市販車の記録ではありません。また、今回は管理された会場でのデモで、一般道での走行を実証したものでもありません。[※2]
驚きの動きを支えるのは、実は二つの別々の仕組み。ここを分けて見ていくと、ロードスターが何を実現したのかがわかります。
① 逆さまでも落ちない? ファン式ダウンフォースの仕組み
「逆さまに走る」と聞くと、タイヤのグリップだけで無理やり走っているように思えるかもしれません。実際には、車体下部のファンで空気を吸い、路面と車体底面の間の圧力を下げることで、大きなダウンフォース(車体を路面に押し付ける力)を生み出します。

図解①:ファンで床下の空気を吸い、後方へ排出する仕組みの概念図。Teslaの電動ファン特許(US 12,746,987 B1)を参考にしたYuna Orbit制作の説明用イメージで、Roadster試作車の内部構造を正確に再現したものではありません。
Teslaが出願・取得した「Electric fan car」という特許には、車体底面の吸気口から空気を取り込み、ダクト内の電動ファンを通して後方の出口から排出する構造が記載されています。[※3]
ただし、これは特許に記載された仕組みであり、実演したRoadsterの全配管や部品配置がそのまま公開されたわけではありません。そして重要なのが、後方のファン排気口は、次に紹介するコールドガススラスターとは別の系統だということです。
② 炎は出ない! SpaceX由来のコールドガススラスター
空中で車体の姿勢を変えるために使われたのが、SpaceXとの共同開発によるコールドガススラスターです。ロケットの炎を噴き出すわけではなく、タンクに蓄えた高圧の空気をノズルから噴射して、反作用による推力を得る仕組みです。

図解②:高圧空気タンクから噴射し、反作用で推力を得る仕組みの概念図(Yuna Orbit制作)。冷ガス式スラスターの原理図で、実車のタンク、バルブ、ノズルの位置や配管は再現していません。
イベントでは、高圧空気を蓄える二つの容器(合計約600リットル)、約250kgの空気、計10基のノズルという構成が説明されています。ただし、これらは発表側の説明に基づく仕様で、市販車にそのまま搭載されると確定したわけではありません。[※1][※2]
えっ、これゼロヨン最速じゃないの? 40年以上前の怪物ロケットカー
イギリスのサンタポッド・レースウェイで記録された402m・3.58秒。英国ドラッグレース殿堂にも残る歴史的な記録です。ゴール通過速度については「約620km/h」という数字も語られていますが、当時の発表速度について異なる証言もあるため、ここでは断定しません。[※4]
なお、Teslaの0.81秒は0〜60mphの加速記録。サミー・ミラーの3.58秒は402mを走り切るタイムなので、比べている指標が違います。Roadsterのゼロヨン実測値が確認できない以上、直接の勝敗は決められません。
昔のロケットカーは、ひたすら速さの限界に挑むための特殊な競技車両。市販スポーツカーとは目的も安全条件も大きく異なります。