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今のAIはまだ「飛行船」!?本当のAI革命はこれからかもしれない

現在の生成AIは1920年代の飛行船に似ている?元DeepMind研究者の大胆な比喩から、脳に学ぶAI研究と『ゲームを自力で攻略するAI』の可能性を考えます。

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草原で巨大なAI飛行船を見上げるゆなとスターク。「AIはまだ飛行船!?」という文字のサムネイル

ChatGPTをはじめとする生成AIは、文章の作成だけでなく、プログラミングや画像制作、調べものの補助までこなすようになった。数年前なら驚いていた機能も、今では日常の道具になりつつある。

それでも、元Google DeepMind研究者のDileep George(ディリープ・ジョージ)氏は、現在のAIを「1920年代の巨大な飛行船」に例えた。2026年10月28日公開のポッドキャスト『Progress』で語られた考え方で、日本では10月30日に「AI新聞」でも紹介されている。

最先端のAIが、まだ飛行船の段階かもしれない。そんな大胆な比喩の意味を、少し考えてみたい。

1. 計算資源は、AI時代の「ヘリウム」?

飛行船は、空気より軽いガスの浮力を利用して空を飛ぶ。一方、飛行機は翼に生まれる揚力など、異なる仕組みで飛ぶ。

George氏が着目したのは、飛行の原理に別の解き方があるという点だ。飛行船の規模を大きくして性能を伸ばすのと、別の原理を探るのとでは、技術の進化する方向が違う。

同氏は、現在のAI開発を支える計算資源を、飛行船に必要なヘリウムに例えている。大量のデータと計算能力によってAIの性能は目覚ましく向上した。しかし、知能の仕組みそのものをもっと深く理解すれば、別の方法でも高度なAIを作れるのではないか、という問題提起だ。

ちなみに、1920年代に飛行機がまだ存在しなかったわけではない。ライト兄弟の初飛行は1903年。これは「飛行船と飛行機という異なるアプローチ」を、AI研究の進路になぞらえた比喩だ。

現在の大規模モデルの発展と、脳に学ぶ研究の方向性を単純化して並べると、次のようになる。ただし、両者は対立するとは限らない。

現在主流のAI開発と、脳科学に学ぶ研究アプローチを整理した概念図

2. 脳が持つ「経験から学ぶ力」に注目

George氏が新しい道を探すヒントとしているのは、人間や動物の脳だ。

人は、見たことのない道具でも、触って試すうちに使い方を覚える。初めて歩く場所でも、何度か探索すれば道を理解していく。こうした少ない経験からの学習、継続的な適応、記憶、計画は、AI研究でも重要な課題になっている。

George氏は2026年2月、非営利研究機関Astera InstituteのAI研究部門を率いる立場に就いた。Asteraは、脳に着想を得たAI研究に対して、今後10年間で10億ドル超の資源をコミットすると公式に発表している。これは「すでに10億ドルを支出した」という意味ではなく、長期的な研究支援の計画だ。

Asteraが研究対象として挙げるのは、変化する環境への適応、過去の行動と結果の結び付け、長期計画、階層的な記憶や世界モデルなど。脳科学から得た知見を、実際に動くAIの仕組みに落とし込もうとしている。

ただし、脳を研究すれば必ず『次世代AIの飛行機』が完成するとは限らない。これは成功が保証されていない、長期的な挑戦だ。

3. AIにゲームを渡したら、自力でクリアできる?

ここで、Yuna Orbitとして一つの実験を想像してみたい。

操作方法も攻略情報も知らないAIに、初めて見るゲームを渡す。

AIは画面を見て、自分で操作を試す。壁にぶつかる。敵に負ける。道を覚える。必要なアイテムの存在に気付き、目標までの手順を組み立てる。

それを繰り返して、最終的にクリアまでたどり着けるだろうか?

この発想は、George氏の研究とまったく無関係ではない。『Progress』で紹介された研究構想では、言葉を使わない仮想環境でAIが行動し、観察から周囲の構造を学ぶ課題が扱われている。周囲を頭の中で地図にする「認知地図」や、その情報を計画に使う能力が焦点だ。

未知の迷路を探査し、地図を組み立てながら進むAIのイメージ

もちろん、特定のゲームを攻略できるAIや強力なゲームAIはすでにある。ここで考えたいのは、事前に攻略法を教えられていない複数の未知のゲームで、経験から柔軟に学べるかという問いだ。

言い換えれば、最初から正解を持っているかどうかではなく、正解のないところから知識を作れるか。

これこそ、AIの未来を想像するうえでワクワクする部分だと思う。

4. 飛行船を作り続けるのも、間違いじゃない

ここは大切なところだ。George氏の例えは、現在のLLMが役に立たないという主張ではない。

むしろ、大規模モデルの発展はこれまで大きな成果を生んできた。AIが得意になったプログラミングは、研究者自身が新しいアイデアを試作する助けにもなる。『Progress』の対談でも、George氏はコーディングAIの進歩を認めている。

実際、データや計算資源の活用と、脳から学ぶ新しい設計は、将来どこかで交わる可能性もある。

大切なのは、特定の研究方針だけを唯一の正解と決めつけないことだろう。

5. AIの歴史は、まだ序章なのかもしれない

今の生成AIは、すでに十分すごい。仕事の進め方も、創作の方法も、少しずつ変え始めている。

それでも私たちは、知能を実現する方法のすべてを見つけたわけではない。

現在のLLMがそのまま飛行機へ進化するかもしれないし、脳から着想を得たまったく別の設計が登場するかもしれない。あるいは、両者が合流する道もある。

どんな技術にも、今いる場所からは見えない未来がある。

もしかすると、AIの『飛行機』は、まだ設計図を描き始めたばかりなのかもしれない。

※確認基準日:2026年11月1日。「飛行船/飛行機」はDileep George氏の比喩・見解であり、現在のAIが技術的に行き止まりだと証明されたという意味ではありません。ゲームの自力攻略を評価する提案および結論部分は、Yuna Orbit独自の考察です。迷路の挿絵は、未知の空間を探索するAIのイメージで、実際のAsteraの実験画面ではありません。

参考資料