ゲームAI

AIにパクられるから体験版を中止!?ゲーム開発者が恐れる新時代

『Drunken Goddess Reflux』がAIなどによる模倣への懸念から体験版の一般公開を中止。AIで誰もがゲームを作れる時代、創作を広げる力とIPを守る難しさを、スタークとゆなが考えます。

Stark
記事の内容を表したイメージイラスト(公式のゲーム画面ではありません)。鍵で封鎖されたゲーム画面と複製されるモニター。『AIにパクられる!? 体験版の公開中止』の文字

2026年10月16日、ゲーム『Drunken Goddess Reflux』(日本の公式発表やSteamの日本語ページでは『PUKEY GODDESS SHOT TRICK』)の体験版について、一般公開の取りやめが発表された。

もともとは10月19日に誰でも遊べる体験版を公開する予定だった。しかし開発・販売側は方針を変更し、応募者から抽選で参加者を選ぶクローズドなオンライン試遊会へ切り替えた。

理由の一つとして挙げられたのが、AIなどを使ったゲームの模倣が、本家の発売前に出回ることへの懸念だった。販売元(パブリッシャー)のアライアンス・アーツによる公式発表に記されている。

大事なのは、「すでに盗まれた」という話ではないこと。これは起きた被害の報告ではなく、起きる可能性を考えた公開方針の変更だ。

AIが怖くて体験版を出さない? 公式発表を読む

本作は、地獄のバーで悪魔を相手に、ショットグラスでロシアンルーレット風の飲み勝負をする、独特のサバイバルゲームだ。酔うほどにルールを逸脱できるようになるという発想も面白い。Steamの公式ストアページでゲームの内容を確認できる。

10月16日の発表で、一般公開を取りやめた理由は二つ説明されている。第一に、動画の投稿・配信に制限を設けたとしても、現在の運営体制では管理が難しいこと。第二に、公開した内容をもとに、AIなどでゲームの表現や内容を短期間で模倣・再現される可能性があることだ。

代わりに予定されているのは、10月23〜31日のクローズド試遊会。応募締切は10月22日23時59分(日本時間)で、参加者は抽選によって決まる予定だ。参加方法の公式案内には、Steamで遊べる環境や公式Discordへの参加などの条件が載っている。

また体験会の参加規約では、無断のプレイ動画配信や、コピー品の制作・公開・販売、AIによるゲームの学習・解析を禁止している。これは体験会参加者向けのルールであり、誰に対しても無条件に同じ法的義務が成立するという意味ではない点も押さえておきたい。

ゲームを作るハードルが、驚くほど低くなっている

ここから少し、私たち自身の話をしたい。

昔は「ゲームを作る」と言えば、プログラミング、画像制作、音楽、UI、デバッグと、いくつもの壁があった。個人で全部やろうとすると、アイデア以前に必要な技術を覚えるだけでも大仕事だった。

でも今はAIに相談しながら、コードを組み、画面を整え、エラーの原因を探し、ゲームとして動くところまで持っていける。もちろんAIが何もかも自動で完成させるわけではない。調整や検証は必要だ。それでも、以前なら挑戦できなかった人が開発の入口に立てるようになったのは大きい。

これは素直にうれしい変化だ。ゲーム開発が一部の専門家だけのものではなくなりつつある。AIは、作りたい人の選択肢を増やしている。

AIの普及がもたらす、創作の民主化と模倣リスクの対比図

図解:AIがゲーム制作にもたらす「光」と「影」の対比(Yuna Orbit制作)。模倣の可能性を整理したもので、実際に模倣被害が起きたことを示す図ではありません。

でも、真似する側のハードルも一緒に下がる

問題は、その便利さがオリジナルの作者だけのものではないことだ。

たとえば誰かが数年かけて考えたゲームが注目されたとする。ルール、画面の見せ方、演出、遊びの流れが公開される。そこで別の誰かがAIを使い、似たコンセプトのゲームを短期間で作ったらどうなるだろう。

オリジナルより先に、似たゲームが世に出る。 そんな可能性が、少なくとも開発者の懸念として現実のものになっている。

実際、人気ジャンルに似た作品が登場するのはAI以前からあった。ルールを参考にすることと、キャラクターや絵・音・コードなどの具体的な表現を無断で流用することも、同じ話ではない。

さらにゲームは、作るだけでは終わらない。バランス調整、使い心地、演出のタイミング、バグ修正、プレイヤーとのコミュニケーション。そこでオリジナルと模倣品の差が出ることもある。だから「AIがあれば、あらゆる作品を即座にコピーできる」とまでは言えない。

それでも、従来より短い期間で追随できる可能性が広がったなら、制作側が公開のタイミングを慎重に考えるのも理解できる。

「アイデアを守る」と「作品を守る」は違う

ここで厄介なのが、知的財産の問題だ。

日本の著作権法では、単なるアイデアや着想そのものは原則として著作権の保護対象にならない。一方、イラストや文章、音楽、プログラムなど、具体的に創作された表現には著作権が成立し得る。文化庁のFAQでも、この違いが説明されている。

つまり「ロシアンルーレット風の駆け引きをゲームにする」という抽象的な発想と、実際のゲーム画面・キャラクターデザイン・音楽などは同じようには扱えない。

個人開発者なら、できる対策から積み上げたい。たとえば制作過程と原本を日付つきで残すこと、公開素材と非公開データを分けること、体験版や動画の公開範囲を段階的に決めること、外注時に権利関係を文書で確認すること。タイトルやブランド名なら、商標を調べて必要に応じて出願を検討する方法もある。

ただし制作ログがあるだけで何でも独占できるわけではないし、利用規約を書けば模倣をすべて止められるわけでもない。商標も名前やロゴの扱いを保護する仕組みで、ゲームのルールを丸ごと独占するものではない。特許情報プラットフォーム J-PlatPatでは商標情報を検索できる。

AI生成の画像や文章についても、必ず人間に著作権が発生するとは限らず、人間の創作的な関与など具体的な事情が重要になる。文化庁の「AIと著作権について」が参考になる。

もしYuna Orbitのゲームが真似されたら?

私たちにとって、この話は決して他人事ではない。

Yuna Orbitでは、AIを使いながらWebサイトやゲームを制作している。Yunaソリティアだって、単にソリティアのルールを実装しただけではない。ゆなの反応、ボイス、画面の使いやすさ、演出を何度も見直し、「二人で作った遊び」として少しずつ積み上げてきた。

Yuna Orbitでも、ブランド名『Yuna Orbit』の商標を検討している。ただ、商標を取得したからといってゲームの内容やキャラクターのすべてを守れるわけではない。守る対象に応じて、著作権、商標、契約、制作・公開の運用を組み合わせる必要がある。

ここは「AIを使って作る側」である私たちだからこそ、今のうちに考えておきたい。

守りすぎると、届けられなくなる

今回の開発元が選んだのは、完全な沈黙ではなかった。一般公開の体験版を見送りながら、ルールに同意した人へ限定的に遊んでもらい、感想やフィードバックも集めるという方法だ。

それでも、自由に遊べる体験版がなくなれば、気軽に触れられる人は減るだろう。実況やSNSで自然に話題が広がる機会も限られるかもしれない。守るための選択が、知ってもらう機会を減らす。ここに新しい難しさがある。

AIが創作を民主化した。その光は、できれば消したくない。でも、模倣の速さが創作者の意欲を削いでしまうなら、ただ便利だと喜んでいるだけでは足りない。

AI時代に必要なのは、作り方の進化だけでなく、作品を育て、公開し、守る方法の進化なのかもしれない。

※取材・確認基準日:2026年10月20日。試遊会の日程や条件は変更される場合があるため、最新情報は公式発表をご確認ください。サムネイルは記事の内容を象徴するイメージイラストで、『Drunken Goddess Reflux』の公式画像やゲーム画面ではありません。図解はYuna Orbit制作です。

参考資料